後医は名医
忙しい人の為に
・後から診察する医師は状況が判っているので、的確な判断が出来ます。
・症状が変わらないときははっきりと『症状が変わらない』と担当の先生に言いましょう。
・医師/病院と合わないと思ったときは検査データを持って、次の病院に行きましょう。
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医師の世界では『後医は名医』という有名な格言があります。
後で診る医師は、それまでの情報を元により進んだ(はっきりした)症状や否定された病気から、的確な診断が出来るということです。
今回はそんなお話。
患者さんから問い合わせのメールをいただきました。
Q 友人から紹介を受けました。受診する前にお聞きします。
空咳が止まらなく内科で検査して問題ないとされ、薬を処方されました。
月が変わっても治らず、今度は耳鼻咽喉科に行きました。喉のファイバースコープでも異常なしで、別の薬を処方されました。
それでも治らずさらに翌月に気管支炎科がある内科に行き、さらに別の薬を処方されました。
少しは良くなったように思いますが、どうしたら良いか困っています。どうぞよろしくお願い致します。
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当院外来を受診いただき、病気の状況を詳しくお聞きしました。
今までに
・フルティフォーム※
・キプレス※
・ムコソルバン
・麦門冬湯※
・ホクナリン※
・コルドリン
・フラベリック
・ビソルボン
・リンコデ ※は症状を抑えるものではなく、使い続けるタイプのお薬
を処方されたとのことですが、症状は7割ぐらい残っているとのことでした。
診察の結果
・診察しても肺の音はキレイ。
・発熱、痰などの炎症症状はみられない。
・それまでの検査で明らかな異常が見つかっていない。
・症状は『特定の行動』をするときに集中している。
という点からはっきりした病巣はないと判断し、『強力な咳止め』であるリンコデを『特定の行動』をする前だけ飲むよう勧めました。
二週間後外来に来られて、あれだけしんどかったのがウソみたいですと、喜んでいただけました。
ここで止めると、タダの自慢話ですが、コレこそ『後医は名医』の典型です。
患者さんは症状が出て困っているから病院に行くのであり、『検査で異常が出ない事に納得したい』訳ではなく、『症状を抑えて欲しい』と思っています。
もちろん、検査で異常があればそれに対する治療をするので検査も大切です。
しかし、それでも治らなければ症状が出ている原因は別のところにあります。
また、患者さんも、症状が良くなっていない事をはっきり伝えないと、医師は『患者さんは症状が多少残っているが検査の結果をみて治療していることに満足している。』と思いがちです。
今回の事は私の診断能力が特別優れているという事が言いたいのではありません。
いままでの先生のところで、患者さんが、症状が治まっていない事を伝えられなかったことの方が問題だと思っています。
神社にお参りするときに黙ってお願いすると神様はかなえてくれるかも知れませんが、病院ではお医者さんにはっきり希望を言わないと希望は叶えてくれません。
患者さんは医師/病院を選べますが、診察室では医学知識の差や、他の患者さんの手前もあって医師の方が強い立場にいます。
こういうところで自分の事を長々と話すのはどうかと思っても、黙っていては患者が不満に思っていることは医師に伝わりません。
お医者さんに『治っていない』事を伝えるのは気が引けるかも知れませんが、勇気を出して言いましょう。
言ってみても『様子を見ましょう』としか言わない様であれば、今後の見通しを聞きましょう。
お医者さんにそういう事を『言う気にならない』ときはあります。
そういう場合は医師の技能、態度、病院の雰囲気など、言いたくない要素があるはずです。
保険医療の世界ではどこで医療を受けても同じ事をすれば同じ料金がかかります。
同じお金を払うなら、早めに見切りをつけて、違う病院に行った方が幸せです。
でもその前に今までした検査の結果だけは貰っておきましょう。
料理の味、接客係の態度、店の雰囲気が合わない飲食店は、何度も行こうとは思わないものです。
何を重視するかは人それぞれですが、自分の感覚を信じた方が納得出来るので、気に入った店があればそこに通った方が幸せになれます。